歯科衛生士 入江 悦子

歯周病と喫煙

喫煙は、歯周組織に非常に悪い影響を及ぼします。タバコの本数が多ければ多いほど歯周病になり易く、重症化することがわかっています。また、喫煙している人には、歯周病の治療を行なってもうまく治らないこともわかっています。

タバコは、肺癌など様々な病気の原因でもあり、喫煙している方は禁煙されることをお勧めいたします。禁煙が無理でしたら、一日10本程度まで節煙するだけでも歯周組織の改善に効果があるとされています。

歯周病と飲酒

飲酒は、歯周疾患の直接的な原因ではないので、適度な酒量であれば問題ありません。但し、糖尿病など、飲酒により悪化する病気をおもちの方は、できるだけ控えるようにしましょう。また、歯磨きができなくなるほどの深酒は極力避けたいものです。

歯周病と遺伝

子供に発症するような特殊な歯周疾患では、ある遺伝子の異常が関与していることがわかっていますが、35歳以降に発症するような通常の歯周病では、現在のところ遺伝子の異常が関係しているか否かは研究段階にあり、はっきりとわかっていません。

歯周病とストレス

心理的ストレスは、歯周疾患の進行に関係しています。ストレスが歯周病に影響を及ぼすメカニズムとしては、ストレスにより副腎皮質ホルモンが分泌され、免疫反応を抑制し、身体の抵抗力が低下することが考えられています。また、ストレスにより生活習慣が変化し、喫煙などが増えることによるという説もあります。

歯周病と糖尿病

糖尿病は歯周病に悪い影響を及ぼします。糖尿病の方は歯周病になり易く、重症化する傾向があります。血糖コントロールが悪いと、歯周病の治療を行なっても治りが悪く処置後に腫れたりしますが、血糖コントロールが良好であれば歯周治療により改善が認められます。つまり、内科での糖尿病の治療と併行して歯周治療を行なう必要があります。

ヘモグロビンAlc(HbAlc)などの検査結果も歯科医師に伝えるようにしましょう。

最近、糖尿病が歯周病にではなく、歯周病が糖尿病に悪い影響を及ぼしていることもわかりつつあります。重症の歯周病に罹患していると、糖尿病の血糖コントロールが悪化する、あるいは歯周炎を治療すると糖尿病の血糖コントロールが改善するとされています。

また、糖尿病と歯周病は、いずれもストレスや食生活など生活習慣病であるということであるということでも共通の要因が関係しており、やはり、内科の治療と併行して歯周治療を行なうことをお勧めします。

歯周病が全身に及ぼす影響

最近、歯周疾患は、未熟低体重児出産(早産や未熟児)、心疾患、嚥下性肺炎〔誤嚥性肺炎〕、あるいは糖尿病などに悪い影響を及ぼしているということがわかってきており、日本でもテレビ番組などのマスメディアに取り上げられています。未熟低体重児出産とはいわゆる早産や未熟児のことで、歯周病にかかっている妊婦ではそれが多くなります。心疾患のうち、特に心臓弁膜疾患の方や心臓人工弁が装着されている方は、歯周病にかかっていると細菌性心内膜炎になる危険があり、注意が必要です。また、歯周病は、動脈硬化に悪影響を及ぼしている可能性があります。嚥下性肺炎は、口の中の細菌が肺に入って起こす炎症で、体の抵抗力が低下している老人で起こりやすく、死亡の原因にもなります。歯周病にかかると歯のまわりに細菌の棲家ができてしまい、その危険性が高くなります。この方面の研究が盛んな米国では,未熟児低体重児との関係は広く国民に読まれているニューヨーク・タイムズ誌にも取り上げられました。また、心疾患との関係では“Floss or Die?”(フロスしますか?それとも死にますか?)というセンセーショナルな言葉が巷の歯科医院の広告などにも見受けられるようになっています。このように、歯周病が全身に影響を及ぼすのは、歯周ポケットの中にいる細菌あるいはその毒素が歯ぐきの血管に入って、全身に広がっている為と考えられています。




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